しろくまはどこに 行った

大野晋

近所の雑貨屋で買おうか?買うまいか? 迷っていたしろくまのフィギュアがいなくなってしまった。店の内装が少し夏バージョンになったタイミングで、もといたところから消えてしまったのだ! こうなると、俄然、買わなかったことへの後悔が湧いてくる。なぜ、お前はあのとき、買っていなかったのか? 2000円なにがしという価格が惜しかったのか? とおかしなことを考えるから困ったものだ。

さて、ここ数年の長期休みの楽しみは、めずらしく日本放送協会がFM波でやっている一日中ある決まったテーマの音楽をかけっぱなしにするという「XX三昧」という番組、特にテレビアニメの主題歌や挿入歌を専門にかけるアニソン(アニメソングの略称)三昧と決まっていた。生まれた時から、アトムやジャングル大帝で育った世代にとっては、アニソンは長期間刷り込まれた生来の音楽になっている。まあ、他愛もなく気楽に聴けるということで、車の運転中に眠気覚ましに聞くにはもってこいだったということなのだが。

そのアニソンが、この春からレギュラー番組化した。某日本放送協会が他局の番組の曲をかけるということ自体がここ数年では珍しいと思う。まあ、数年前までは映画音楽でひと番組できていたのだから、それを考えればあたりまえか? その番組を聴いていて思うのは、リクエストをする世代が50代、40代、30代に集中し、20代、10代が非常に少ないという傾向だ。そういえば、最近、テレビを見る機会が減ってはいるが、聞くところによると、テレビアニメの放送枠が減り続け、最近は深夜枠に残るようになったのだとか。深夜、放送するアニメというのは、昔の深夜番組よろしく、10代の若者が隠れてこそこそ見るとも思えないから、30代以上の大人用になってしまったのだろうか。テレビアニメは、今後、時代劇のように消え去る運命なのかもしれない。

消えたと言えば、書店にあれほどうず高く積まれていたコミックも最近は減少し、店の片隅に追いやられるようになった。まあ、こちらは私が学生時代を送った30数年前に戻ったとも言えるかもしれない。

時代はどんどんと立ち止まらずに流れていく。しろくまがいなくなったように、知らない間に何かが消えてしまったということに気づくことも、今後もあるだろう。

コミックと言えば、知らない間に夏と冬の2回開催になっていた(おそらく、冬だけではおへそを大胆に出すコスプレイヤーが風邪をひくから配慮したのかもしれない?)コミックマーケットに出店する同人誌2誌に、技術系の雑文を掲載することになった。昔はコミケと言えば、漫画同人誌の即売会だったのだが、最近ではマンガに限らずノンジャンルの同人誌の即売会になったらしい。ここでも、時代は変わっていくようだ。

さて、最近は同じ雑貨店で大きなゾウのフィギュアが気になっている。買ってどうする? と言われると手をひっこめるしかないのだが、果たして来月どうなっているのか? しろくまのその後とともに楽しみにしていて欲しい。