オトメンと指を差されて(25)

大久保ゆう

好きな相手には振り向いてもらえなくて(うまくいかなくて)、その代わりと言ってはなんだけれども、自分になついてくれる子やいつも顔を合わせたりする子に対してはついつい優しくしてしまう――なんて言うと、恋愛の話なんかに見えちゃうかもしれませんが、私にとっての紙とデジタルの本との関係はおおよそのところこういう感じだったり。

最近、紙との関係が悪くなってしまうような出来事がもろもろありまして、遠からず私は紙に絶望してしまうのではないかと我ながら心配になってしまうのですが、しかし個人の関係というものはえてして世の中にはたいした影響を持ち得ないものでありますから、私と本の間柄なんていうのはどうでもいいことのひとつで、また気になる人がいたとしても、無料の翻訳はありがたいからそれなりにデジタルとよろしくやっててくれ、というのが大方のところでしょう。

ここで愚痴を書いても仕方なく(むしろ書いてから消しました)、何か楽しいことでもしゃべりたいのですが、それならば美しい本といちゃいちゃ(あるいはきゃっきゃうふふ)するようなのが精神衛生上よろしいような気も致しますので、せっかくなので前回に引き続き〈本ガール〉の話でもしようかなと思い至ったりするわけなのです。

先月の発言はまことに思いつきで見切り発車過ぎるものがあり、何ら受け入れ体制もできておらずたいへん申し訳なかったのですが、それなりに反響もあったということでぼちぼちと本腰で準備を始めておりまして、近いうちにちゃんとしたサイトなりメアドなり窓口なりコンテンツなりを用意しようと考えておりますので、興味おありの方は今後の展開を注視していただけると幸いです。

少なくともシーズンごとに1度ずつやっていければと愚考しておるわけなのですが、本格的に始めるとなると、やはり対外的に趣意書なるものをばばんと掲げた方がわかりやすいですし、これまでの経緯をご存じない方にもよろしいのではないかと感じる次第でございますから、ここで3つほど〈本ガール〉企画の意義などを立てておきたいと思うのです。

1.本をかわいいもの/美しいものとしてめでる・楽しむ。
 これがまず基本です。本の表紙とかデザインとかをかわいいものとして扱いたい、そのひとつのあり方として本そのものを組み込んだ〈本ガール・ファッション〉を提案してみる、ということなのです。ただ外からながめるのだけではなくして、自分に関連づけて楽しむということでもあるのでしょうが、むろんのこと本は本だけで成立するわけでなく、読者との関係のあいだにあるわけで。その多様性の選択肢としてファッションはどうでしょうかと。かわいい本の表紙からそれに合ったコーディネートへ、あるいはコーディネートに合わせたおしゃれな本を選んでみるなどなど。そういえば私は昔から本を読むより、本をモノそのものとして愛でる方が好きだったなあというか、ということを思い出しつつ。

2.一種の表紙批評・デザイン批評のエンターテイメントを試みる。
 書評というと本の内容について触れたものでちまたにありふれておるわけですが、本の表紙やデザインの批評というものはそれに比べると少ないものであります。そして存在してもえてしてそれはどこか専門的なもので、一般的に人が読んで楽しむものではありません。しかしそれをファッションという文脈に置いてみることによって、表紙やデザインに別の視点から光を当てて楽しげに考えてみようというわけです。(さらに書評だと本のデザインでなく内容に触れているので書影の引用要件を満たさず原則は許可が必要なわけですが、本ガールファッションをデザインへのひとつの批評とすれば、書影を写真のなかに引用することは可能になるということでもあります。)

3.あえて本の”モノ”としての側面・性質を売り込む。
 近頃は電子書籍元年などと言われて、遅かれ速かれどんどんとそちらの方へ本が移行したり同時発売されたりするのでしょうが、その中身が同じでもなお紙の本を売るとするならば、いったい何が紙の本のメリットなのかと問わずにはいられないでしょう。そこで私はやはり〈外身/外見〉だと言いたいし、言えると思うのです。電子書籍ではファッションとともにコーディネートしにくいけど、紙の本ならばそれができるのですよ、というかやりましょう!ということを声を大にして。そこでは厳然たる本の〈モノ〉としての側面がクローズアップされざるを得ませんし、もうひとつの紙のあり方というものが考え得るのではないかと感じる次第なのです。(むろんこれまで歴史上、紙の本は幾度となく飾りやアクセサリーとしても扱われてきたわけですから当たり前と言えば当たり前なのですが。)

……というわけで、前回のちょこっとした表現をまじめにまとめ直してみました。むろんやるからには本文化の活性化やら売上の増加やら何やらを目指したいところでありますので、使わせていただく本の出版社さまや著者さまにおかれましては寛大な心をもって見守っていただけると幸いです。(積極的にご協力いただけるのならばさらに嬉しいです。水牛執筆陣さまの御本を対象にしても、どうか怒らないでくださいね。)

こういうことをつらつらと考えるとつけ、自分は近江商人の息子なのだなと思わずにはいられません。いわゆる三方よしといいましょうか、本とその送り手と受け手にとってそして社会にとってよろこばしいものになればいいなと思っております。実は他にも子どもに本をどう届けるかとかあるいはもろもろたくさんアイデアはあるのですが、それはまた何か機会がありましたら。

というわけで、ちゃんと支度できましたらまたみなさまにご連絡申し上げます。まずは今夏(あるいは今秋)の本ガールから。楽しみにしてお待ちください。