アフロ・アジア的

高橋悠治

数える デジタル 量る アナログ 
デジタルは点描 アナログはスケッチ
固まった輪郭を溶かして 
書けない 言えない 微妙な変化を感じてください
ほの暗い空間に明滅する 眼差し
地下から現れ どこともなく消えてゆく 川
始まりもなく 終わりもない 流れ
巡りはじめると ささやきに引き込まれ
つぶやく声が起き上がり
心は揺さぶられ だんだんに鎮まる
だれのものでもない意識がめざめる
指先のかすかな揺らぎも はっきりわかるほど
眼交いに 揺れうごく気配
何ものかが 周りをうろついている
500年も世界にこだました軍隊の行進
その後から 賛美歌の合唱
そんな無残な響きを洗い流してくれる
囲い込まれた島々にまき散らした種から
黒い大西洋を渡って運ばれた リズム
密やかな両手が撚り合わせる アフロ・アジアの書
モザイクからアラベスクへ アラベスクから文字の模様へ
見渡せば 遠い霞が縁取る 乱れた線
暈 影の光 あいまいに光る葉陰
ゆっくり移ってゆく色に 偲ばせる 長雨の兆し
染みわたる虹の 徴

* いくつかのことばを石田秀実と井筒豊子から借りて