『ロベルト・シューマン』 高橋悠治

目次    


一歩後退二歩前進


シューマン論の計画

現状分析の意味

見とり図

転倒の方法 その一

芸術運動と機関誌 一八三〇年

芸術運動 一九七七年

雑誌メディアの批判

転倒の方法 その二

批評についてのおしえ
(ダビデ同盟偽書)


批評家の誕生

老キャプテン

訳者の注

知的貴族主義

クラインのつぼ

フロレスタンとクレールヒェン

墨テキにこたえて

むすび

    転倒の方法 その二


雑誌をつくるのは編集だ。論文の作者、情報提供者、通信員などは、素材を売り渡しているだけだ。このメディアの転倒を考えてみよう。

文章自体が編集であるようなものは可能か? 引用と注釈ではなく、地の文が引用からできていて、再引用が可能なように要約され、リズムをあたえられているもの。

三行の知識を数ページつかって記述するかわりに、数ページの知識を三行の技術に圧縮すること。

部分にすぎないものを体系的な記述で全体に見せかけるのではなく、全体に見えるものが部分にすぎないことを明示する。

論理の連続整合性にたよる全体の分析と静的理解のかわりに、省略と具体的なイメージによる一点突破。

外部と対立する内部の優位を意味する私的な表現を排除し、行動だけが解決できる領域については沈黙し、ことばに宣伝と煽動の機能をとりもどす。

情報提供と具体的な対象の抽象化した理解にすぎない批評に対して、報告することだけによって、事実を比喩に変えるような、批評としての情報をえらび、謎の形で表現する。

以上の条件をみたすスタイルは何か? その集成としてのメディアは、どのような具体的な形をとるか?











『ロベルト・シューマン』(青土社 1978年6月5日初版発行)より




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